糖尿病と手術のリスク
糖尿病と言えば三大合併症と言われる「神経の障害」「目の障害」「腎臓の障害」が有名
で、糖尿病患者さんのほとんどの人が知っています。しかし、糖尿病も少し時間が経過す
ると、それらのリスクは無視できないものの、まだ先の話というような考え方をする人も
少なくありません。
つまり、多少の高血糖状態には動じなくなる訳ですね。今回は、そのような人に注意して
いただきたいことになります。
三大合併症というのは、糖尿病の初期からずっと真剣に改善に取り組んでいる人には、あ
る意味、生涯そのリスクは低いと言えるかも知れません。多少適当であっても、常に血糖
値を意識して生活している人にもそれほど深刻な問題ではないかも知れません。
ところが、そのような慎重派の人も含めて知っておいて欲しいのは、急な怪我や糖尿病以
外の病気で手術が必要になったときのことを考えたことはあるでしょか？
まだ糖尿病の合併症を発症していないとして、手術が可能な血糖値とは
空腹時血糖値 １１０～１３０mg/dl
食後血糖値 １４０～１８０mg/dl
ＨｂＡ１Ｃ ５.８～６.５％
を目安としていることを覚えておく必要があります。
糖尿病とは高血糖状態が続いている状態で、それは抵抗力が低下しているという意味でも
あり、手術による感染症の発症リスク、手術創の化膿（傷の治りが悪い）というリスクも
含まれているのです。
外科手術を受けると、健康な人でもインスリン抵抗性が高くなり高血糖状態になりますの
で、もともと血糖値が高い人ならどうなるかは誰にでも解りますよね。
手術後の傷が治りにくく、化膿しやすいため、手術の場所によっては血管が詰まりやすく
血流が悪くなりやすい足などの切断につながることもあります。
糖尿病と言えば、普通は三大合併症で失明したり、足を切断したり、人工透析を受けたり
ということばかりが取り上げられますが、実は、いつ起こるか予測がつかない緊急時にお
ける手術のときのリスクのことを真剣に考えて血糖値対策に取り組むべきなのです。
なぜなら、２型糖尿病が発症する年代は、他のさまざまな重篤な病気が発症しやすい頃で
もありますので、糖尿病はそのような手術リスクの高い病気のサインであると考えて血糖
値対策も真剣に取り組む必要があります。
血糖値を改善する方法
糖尿病は「治らない病気」とか「治すことができる」とか、さまざまなことが言われてい
ますが、例え、治すことができても、一度治せば再発しないという保証はありませんとい
うより、すでに糖尿病になりやすい体質や生活習慣であるという証拠ですので、一度糖尿
病になったら、それは一生治らないと思っていた方が正解かも知れません。
とは言っても、そのまま放置しても良いという意味ではなく、それ以上悪化させないよう
に注意することで、特に日常生活において、糖尿病であることによる問題が生じることの
ないような生活ができるようにすることです。
そこで、どうすれば血糖値を安定させられるかという方法について書いておきます。
まずは、毎日、同じ時間帯に体重計に乗る習慣をつけましょう。糖尿病と肥満は深い関係
にありますので、ここでは内臓脂肪とか皮下脂肪とか細かいことではなく、体重の変化と
その変化を引き起こす状況を把握して、食事や運動の対策を立てることに役立てます。
次に、できれば歩数計を持ち歩くようにしましょう。糖尿病には有酸素運動が良いと言わ
れていますので、歩くことを勧める人も多いですが、ただ漠然と歩くより目標ができて、
やる気になりますのでおすすめです。
食事は、「あれがダメ」とか「これが良い」というのは、なかなか難しいし続きませんの
で、野菜を多めにして、野菜から食べることを習慣化しましょう。その理由はもうどこで
も言われていることですが、食物繊維は糖質の吸収を抑える働きがあるからです。
野菜があまり好ましくない人は、食物繊維のサプリメントなどもいろいろ出ていますので
それを活用するのも１つの方法です。
ただ、間違えても、食事の代わりに菓子パンや惣菜パンに甘い飲み物などという選択肢は
ありませんし、飲酒もあまり好ましくありません。特に喫煙は糖尿病の敵ですので、強い
意志をもって止めましょう。
糖尿病は、タバコ以外は「絶対ダメ」というものでもなく、付き合い方を改善することで
悪化させないようにするのが基本です。なので、無理な対策より一生続けられる対策をす
ることが大切です。
