1.下肢静脈瘤の原因と症状
静脈瘤というと何か怖い感じがしますが、静脈がこぶ状に膨れた状態のことです。静脈と
は心臓から動脈を通って送り出された血液が、再び心臓に向かって戻る血管のことを言い
ます。動脈も静脈も一方通行ですが、動脈には血圧という圧力がかかりますが、静脈の場
合は勢いが弱くなるため血液が逆流する恐れがありますので、それを防ぐために「逆流防
止弁」というものがついています。この逆流防止弁の働きがおもわしくなく、血液が逆流
して静脈の流れが悪くなって、血管が膨らんだ状態(静脈不全)が慢性的に続くことで静
脈瘤が起きることになるのです。
ボコボコとしたこぶ状の血管が浮き出るといった症状がその代表的なものですが、細い血
管が皮膚に現れる蜘蛛の巣状の静脈瘤といったものもあります。このレベルでは、機能的
な問題というより、美容的な問題として取り上げられることが多いですが、足がむくんだ
り、だるいといった自覚症状があることもあります。
問題は、そこから更に進行すると皮膚に炎症が起きたり(鬱滞性皮膚炎)、かゆみが起き
たりすることもあり、悪化して皮膚がただれたりする(潰瘍)こともあります。一般的に
病院へ行って「下肢静脈瘤」を知る機会になることが多いと言われる状態です。
メディアの影響もあって、最近では下肢静脈瘤について知る人も増えてきていますが、そ
の反面、どうしたら良いかわからない人が多いのも事実です。正直なところ、下肢静脈瘤
はそれだけで生死に直結する病気ではありませんが、異常に違和感があるような場合は、
医師に診てもらうことも考えましょう。
下肢静脈瘤は誰にでも起きる可能性がありますが、特に「立ち仕事をしている人」「妊娠
・出産経験のある人」「高齢者」「肥満の人」に起こりやすい傾向があります。そのほと
んどは、引力に加担して静脈の働きを弱める要因になるためです。
2.下肢静脈瘤の対処の仕方
見た目の症状(血管がボコボコ浮くなど)とは別に、その自覚症状がない場合は、一般的に治療というより着圧ソックスなどを着用しながら経過を見るということが多いようです。
つまり、外から圧力をかけて、血液の逆流を防ぐという対症療法です。もちろん他にも、
長時間の立ち続けを控える、足を高くして寝る、肥満を解消するなど、下肢静脈瘤の原因
になっていると思われることは、できるかぎり改善して行くように心がけます。
よく血流促進のためのマッサージや体操なども紹介されていますが、いずれもそれなりに
効果はあると思いますが、同じやるなら最も理にかなったことに時間を割くべきです。ふ
くらはぎは第二の心臓などという言葉を聞いたことがある人も多いと思いますが、脚の静
脈の血流促進に欠かせないのが「ふくらはぎの筋ポンプ」です。そして血流を促進する働
きの重要ポイントは「足首」です。つまり、あし首とふくらはぎを同時に鍛えることがで
きる運動をすることです。椅子の背もたれなどにつかまり、足を肩幅に開いて立ち、両足
のかかとを少しだけ浮かせます。そこから、背伸びをするようにかかとを上げ、元の位置
までもどす運動を20回程度繰り返します。1回の上げ下ろしに3秒、床に足を着けない
ことが大切です。これにより、くるぶしとふくらはぎの両方を鍛えることができます。
ただ、努力していても症状の改善が見られない場合には、どの段階で病院へ行くかという
ことも覚えておく必要があります。ポイントは「皮膚に何らかの症状が出てきたとき」で
す。特に、足の内側のくるぶしの付近が茶色に変色してきたときが、皮膚潰瘍のサインと
も言われていますので、その変化に気付いたときには迷わず、皮膚科・外科・循環器外科
・形成外科・心臓血管外科などを受診するようにしましょう。