1.高齢者が健康を損なう要因
高齢者が寝たきりになって介護を受けるようになる原因の多くは、筋力低下(サルコペニ
ア)による転倒や関節痛などが関係していると言われています。何もしなければ、人は年
を重ねるごとに筋肉量も筋力も低下していきます。これを「サルコペニア」と言います。
サルコペニアになると、身体機能が衰え、歩く速度が遅く(歩幅が小さく)つまづきやす
い上に、バランスを崩しやすくなります。つまり、転倒しやすくなるのです。高齢者が転
倒して骨折などすると、治りにくく、治療中にさらに筋力が低下してしまうため、リハビ
リの成果も多く期待できないほど衰弱してしまうことで、介護生活になってしまうのです。
筋肉量が低下すると糖代謝が悪くなるため、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣
病になりやすく、関節の負担が増えることから腰痛や膝痛などの原因にもなります。また、
歩行機能が低下すると骨密度が低下して、骨粗しょう症などで骨折のリスクが高くなるだ
けではなく、骨折からのリカバリーも難しくなるのです。
ここで気になるのが「年齢を重ねる」とは具体的に何歳ぐらいのことを言うのかというこ
とですが、筋肉になるタンパク質が体内で合成されにくく、逆に分解されやすくなる年齢
は一般的に「40歳」頃と言われていて、この頃から全身の筋肉量は年に1%程度減少に
転じると言われています。もちろん、本人の栄養事情や活動状況など個人差が大きいので
きっちりとは線引きできませんが、神経筋疾患や外傷治療などによる入院などの特別な事
情がなければ、おおむね40歳頃が警戒すべき年齢ということになります。
2.高齢者の筋肉・筋力強化法
高齢者と言っても、40歳と70歳では同じ基準では考えられませんが、まずは「下腿周
囲長(ふくらはぎの最も太いところ)」を測ってみましょう。男性34センチ、女性33
センチ未満であれば、サルコペニアの疑いがあるということになります。
他にも、握力が男性で28キロ、女性で18キロ未満の場合も、サルコペニアによる筋力
低下が始まっている疑いがあるとされています。そこに、5回椅子立ち上がりテストとい
うもので12秒以上かかる場合は身体機能の低下が認められるとされ、下腿周囲に握力ま
たは身体機能のどちらかに該当する場合は「サルコペニアの可能性あり」という診断結果
になります。
そこで、高齢者が筋肉量・筋力をアップする方法ですが、高齢になるほど「無理をしない」
ということを意識するようにしましょう。厚生労働省の推奨では「1日40分以上の身体
活動」を行うこととなっていて、日常生活上の活動も含まれます。つまり、座ったまま、
横になったまま、といった状態にならなければ、どんな動きでも良いということです。な
ので、まずは「歩く」「階段を上る」「掃除をする」といったことで、じっとしている時
間を減らすことから始めてみましょう。
そして、ゆとりができてくれば「腕立て伏せ」「スクワット」などを取り入れるのも悪く
ありませんが、何をやるにしても「ゆっくりと行うこと」です。実は自分の体重を負荷と
する筋肉トレーニングは、ゆっくり動くことで効果はグンとアップするのです。
すでに腰や膝が痛いという場合は、症状が悪化しない程度でトレーニングをすることです。
ストレッチをして身体をほぐす程度でも良いですし、かかと上げや足上げ運動ならそれほ
ど難しくありませんね。
利なアイテムもあります。足を乗せているだけで自動で筋肉を動かして運動してくれます
ので、これなら誰でも始められます。問題は少し高価な点ですが、これも考えようで、病
院通いをすることを思えば、ずっと安いものかも知れません。