1.鼻せつの原因と症状
ほとんどの人は、一度は「鼻の入口付近の皮膚が赤く腫れて、痛みを感じる」ような経験
をしたことがあると思います。その大半は「黄色ブドウ球菌」による感染症「鼻せつ」で
すが、この細菌は常在菌と呼ばれるタイプのもので、俗に「ありふれた細菌」などとも言
われる健康なときでも体内や皮膚に住みついている菌の一種です。
常在菌は、本来は健康を保つために必要なもので、近年よく話題になる「腸内細菌」など
もその1つです。皮膚の常在菌に関しては、外的刺激から皮膚を守ったり、病原性の強い
細菌の繁殖を抑えたりして皮膚の健康を保っています。そのなかの1つに、皮膚表面や毛
穴に存在する黄色ブドウ球菌があるのです。
皮膚の表面には数十種類の常在菌が住んでいて、そのバランスが安定しているときには強
力な肌のバリアとして機能していますが、ストレスなどで常在菌のバランスが崩れると、
黄色ブドウ球菌などの病原性の高い細菌が増殖して皮膚に炎症などを引き起こすことにな
るのです。ニキビの原因となるアクネ桿菌なども同じです。
鼻せつは、鼻に炎症が起きて、鼻が赤く腫れ痛みをともない、膿を出すこともあります。
基本的にはそれほど深刻な事態にはなりませんが、たまに鼻せつによる細菌感染が奥深く
伸展することで蜂窩織炎(SLE)や海綿静脈洞血栓症などの合併症を引き起こすことも
あります。それほど頻発する訳でもありませんが、可能性としては無視して良いものでも
ありません。
2.鼻せつの治療方法は
鼻せつは、鼻の入り口付近をいじる、鼻毛を抜くなどの皮膚を傷つけるような行為から、傷ついた部分に黄色ブドウ球菌が感染することが多いと言われています。基本的な治療法
は抗生物質を用いることになっていますが、私は抗生物質に弱いので漢方処方の軟膏薬を
使っています。抗生物質との比較はできてませんが、おそらく遜色ないと考えています。
いずれにしても、悪化させないようにすることが大切です。
鼻せつに限らず、鼻の中にできものが出来て痛いという場合は、まずは「鼻の粘膜を刺激
しないこと」です。寒い環境下(冬の外出・夏の冷房など)ではマスクを着用したりして
鼻への刺激を少なくする工夫をしましょう。特に、鼻せつは腫れて大きく成長してくると
出血部位となったりして、少し厄介なので注意しましょう。
鼻せつの予防としては、必要以上に鼻を刺激する行為をしないことが一番です。そして、
鼻を乾燥(ドライノーズ)させないことも大切です。鼻の奥にある粘膜が乾燥する状態で
すが、鼻の奥がカサカサしたり、ツーンとした痛みを感じるような状態にしないことです。
また、加齢とともに増える傾向にある「萎縮性鼻炎」も、鼻の奥が乾燥しやすくなります
ので、かさぶたができやすくなったり、鼻水が出やすくなったりします。ただ、この萎縮
性鼻炎の原因はよくわからないケースが多いので、病院へ行ってもすぐに結論が出るとい
う訳でもありませんが、とりあえずは医師の診断を受けておくと良いかも知れません。