1.アルコール依存症とは
アルコールを長期間にわたって大量に摂取し続けることで、アルコールなしでは生活でき
なくなってしまう状態になってしまっていることをアルコール依存症と呼んでいます。大
量のアルコールを摂取し続けることで、脳のメカニズムに変化が生じ、アルコールが常に
体内にある状態が正常と認識してしまいます。すると、神経系の細胞の性質にも変化が現
れることになり、血液中のアルコール濃度が低下することで神経バランスが崩れて離脱症
状が現れるようになります。これが、なりふり構わずアルコール摂取の欲求を満たそうと
するような行動に走らせるのです。
結果、飲酒欲求をコントロールできなくなり、飲酒量や時間、状況なども考えず飲酒する
ようになり、日常生活や社会生活にも支障が生じるようになります。このようにして社会
から孤立してしまうと、さらに飲酒に走るといった悪循環に陥ってしまうことも多くなり
ます。そしてまた、症状が悪化すると、一時たりとも体内のアルコールを切らすことがで
きなくなって、起きたら飲酒、飲み潰れて目が覚めたらまた飲酒といった連続飲酒の状態
になってしまいます。その頃までには、もうすでに肝臓や脳細胞にも大きなダメージが生
じている可能性が非常に高いと言われていて、ときには痙攣発作や幻覚、幻聴などが現れ
たり、生命の危機状態に陥ることもあります。
2.アルコール依存症の予防
アルコールは、血液中に一定時間とどまり、肝臓で分解されていきますが、アルコール依
存症になると、血液中のアルコール濃度が減少すると、イライラ感・不眠などの精神的な
症状、動悸・吐き気・発汗・頭痛・震えといった身体的な症状が現れてきます。
もうすでにこれらの離脱症状が現れている場合でも、まだそれほど重症化していないよう
なら自分で、難しいようなら外来治療を受けて、まずは「一切のアルコールを断つ(断酒)
こと」です。症状の程度によっては入院治療になることもあります。
落ち着きを見せたら、断酒を継続するためのさまざまなリハビリテーションが行われます。
アルコール依存症になりたくないと思う人は、できるだけ早めに予防するようにすること
です。アルコールは適量摂取なら、深刻な健康被害を引き起こすことはありませんので、
大量摂取を継続しないように注意することが大切です。また、それほど過剰に摂取してい
なくても、連日、飲酒している人は、たまには肝臓を休ませたり、肝臓の負担を助ける働
きのある医薬品なども上手に活用することです。
アルコールの適量(アルコール依存症の発症リスクが少ないとされる1日の摂取量)は、
厚生労働省の定めるところでは、純アルコール換算で20g以下とされていて、その目安
はビールなら500ml、日本酒なら1合、ワインならグラス2杯程度となっていて、そ
の量の3倍以上を摂取している人は、アルコール依存症になるリスクが高くなると言われ
ています。アルコール依存症は、エチルアルコールという依存性薬物を長期間にわたって
過剰に摂取することで起こるもので、意思や特定の性格傾向の問題ではありませんので、
過剰摂取になるような状況を長期間続けないことが大切です。