1.高齢者と歩行困難
人は歩くのが普通のような気がしますが、この「歩く」という動作には、脳や神経など体
のさまざまな機能が関係していて、これらの機能のちょっとした変調でも歩けなくなって
しまうことがよくあります。
その原因となるものは多岐にわたりますが、ここではケガや骨折など、原因がハッキリし
ているものではなく、いわゆる加齢による筋力やバランス感覚の低下などによる歩行困難
についての対処の仕方についてです。

高齢者が歩けなくなる主な原因の1つとして「筋力の低下」があります。一般的に筋肉量
の低下は40~50代頃から見られると言われていますが、下肢の筋肉量はすでに20代
から減少するとされています。つまり、高齢になったから急に筋肉量・筋力が低下して歩
けなくなったのではなく、もっと以前からの予防ができていなかったことが大きいのです。
近年、ロコモティブシンドローム、サルコペニア、フレイルなどという言葉を耳にするこ
とが多くなりましたが、いずれもそれぞれに関連性の高い運動機能が低下していることに
関係する状態ですが、高齢者の身体機能の低下による歩行困難はサルコペニアの状態であ
るケースが多いようです。
サルコペニアとは、加齢や疾患により全身の筋肉量が低下して、身体機能の低下が生じる
状態のことを言います。また、運動器の障害により移動機能が低下した状態のことをロコ
モティブシンドロームと呼んでいます。いずれにしても、そのまま放置すれば、将来は介
護のお世話になる可能性が高い状態ですので、歩行に違和感を覚えたら、できるだけ早い
時期に、近くの自治体・地域包括支援センターなどで相談してみましょう。
2.歩行障害の改善法
サルコペニアが疑われる高齢者は、運動による筋力トレーニングとバランス感覚を整える
ためのトレーニングを行うことで改善する可能性が高くなります。いずれも継続して行う
ことが大切で、それは現時点で何の問題もなく歩けている人にもフレイル予防対策として
おすすめの方法になります。
もっとも簡単な方法は、まだ歩けるようなら、ウォーキング(週2~3回以上)を行うこ
とです。時間は無理なくできる範囲でするようにして下さい。筋力がついてきたら少しづ
つ時間を延ばして行くようにすることです。自信のない人は、杖や歩行器などの器具を使
うことも問題ありません。

バランストレーニングは、片足で立ち、身体を左右前後にゆっくり動かしながら10秒ほ
どたっていられることを目標にしてみましょう。太極拳などのゆっくりした動きとバラン
スを組み合わせたタイプの運動もおすすめです。
歩行対策は早目に始めるのが効果的ですが、その目安になるのは「歩くスピードが低下し
ているように感じる」「前のめりで歩くようになった」「歩幅が小さくちょこちょこ歩き
になっている」「つまづきやすくなった」といったことです。自分で気付くころには、も
うかなり症状が進んでいますので、1日も早くトレーニングを開始することです。
す訓練から始めてみましょう。最近は電動式の歩行訓練機も手軽な価格で入手可能ですの
で、試してみる価値は十分にあります。