1.便失禁の原因と症状
尿失禁という言葉は良く耳にしますが、全国で500万人以上の人が悩まされているとい
われているのが「便失禁」という症状です。便失禁とは、自分の意思に反して「便」がも
れる症状のことを言います。生命にかかわるという病気ではありませんが、外出するのが
怖くなる、乗り物に乗れなくなる、といった生活の質にかかわる深刻な問題が含まれてい
ます。2017年に「便失禁診療ガイドライン」が登場したことで、初めて疾患としてと
りあげられるようになったばかりですので、病気としての知名度は低いですが、高齢者に
とっては、それほど珍しい病気という訳でもありません。
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日本での便失禁の有症率は、65歳以上で1割弱と言われていますが、恥ずかしいという
気持ちや、どこに相談に行けば良いのかわからないといった人も多く、潜在的な患者数は
500万人以上とも言われています。
便失禁は大きく分けて、漏出性便失禁(気付かないうちに便がもれる)、切迫性便失禁(
便意があって我慢しきれず便がもれてしまう)、そして両者が混在する混合性便失禁の3
つのタイプになります。
もっとも多いとされているのが、高齢者の漏出性便失禁で、加齢による排便機能の低下(
肛門括約筋、直腸の感覚など)ですが、出産・大腸・痔などの手術の後遺症、腸の病気、
認知症、などさまざまな原因で症状が現れることもあります。
ただ、便失禁は治療が可能な病気とも言われていて、治療法は内科的治療と外科的治療が
あります。内科的治療は薬物やトレーニングによって改善を試みる方法で、外科的治療は
手術による改善法ですが、ほとんどの場合は内科的治療でかなりの効果が認められている
と言われています。
2.便失禁を改善するには
漏出性便失禁の人は軟便であることが多いと言われていますので、まずは食物繊維の多い食事を心がけるようにしましょう。また、辛い物など刺激性食品を控え、アルコールの摂
取も減らすようにしましょう。食事療法のポイントは「白米ごはんを1日2膳以上食べ、
果物、ヨーグルト・納豆などの発酵食品を減らし、小麦でできたケーキなどの甘いもの、
青汁、カフェイン飲料などを控える」ようにすることです。また、整腸作用のある漢方薬
も軟便対策には有効です。
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次に、排便機能を高めるために、適度な運動をするようにしましょう。さらに、骨盤低筋
を鍛える体操も取り入れてみましょう。方法は、肛門をギュッと締め、3秒間ほど静止し
て、その後ゆっくりと緩める運動を数回繰り返してみて下さい。慣れてくれば、少しずつ
時間を延ばすようにします。
切迫性便失禁は、便意を感じるもののトイレまで我慢できず便がもれてしまう症状で、大
量にもれてしまうリスクが高くなるタイプの便失禁です。便意の生じるタイミングの予知
が難しいため、外出しても常にトイレの場所を意識しなければならず、トイレのない電車
やバスに乗ることすらできなくなってしまい、精神的な不調も招きかねません。それでも
どうしても外出しなければならない時は、便失禁パッドの使用や下痢止め薬などを飲んで
おくという方法もあります。
また、日常生活上の心得として、荷物を持ったり、椅子に腰掛けたり、体を動かすときに
は、「頭から尾骨までまっすぐに伸ばした状態を保つ」「ハ~と息を吐きながら動く」「
ゆっくり動く」ことを心がけましょう。もちろん、腹部を締め付けるようなガードルなど
は着用しないようにしましょう。
年だからとあきらめず、セルフケアに取り組むことで、活動範囲を広げることができるよ
うに、少しずつ取り組むようにしましょう。