1.疥癬の原因と初期症状
大きさ 0.4ミリという目に見えないダニ(ヒゼンダニ)が皮膚に寄生して、毎日数個の卵
を産み付け、その卵が孵化して約2週間で成虫になり、皮膚の表面でどんどん増殖してい
きます。その際、皮膚に赤みや激しいかゆみやを引き起こす状態が「疥癬」です。
疥癬は、ヒゼンダニが寄生している皮膚や寝具、衣類を介して感染しますので、老人ホー
ムや介護施設などで集団感染したというニュースもときどき見かけます。
疥癬の初期症状は、まず「かゆみ」となって現れます。ただ、ヒゼンダニが皮膚に寄生し
てから1~2か月は潜伏期間があり、特別な症状がでないことが多いですが、ある日(特
に夜間など)に激しいかゆみが出る(過敏反応)ようになります。
また、皮膚に赤いぶつぶつが出ることもあります。手首の手のひら側、指の間、肘、脇の
下、乳房の下、ヘソ、おしり、太もも、足の付け根、陰部などに左右対称に症状が現れま
す。ヒゼンダニは皮膚の下にトンネルを作って(疥癬トンネル)、その中に卵を産み付け
ます。疥癬トンネルができると、皮膚に数ミリ程度の破線状のものが見えます。
重症化すると、かさぶたや垢がたまったような状態に見えることがありますが、これはヒ
ゼンダニが数千匹も寄生している状態で、ノルウェー疥癬とか痂皮型疥癬と呼ばれ、特に
免疫が弱っているような場合に起きやすい症状です。このかさぶたや垢に見える部分が剥
がれ落ちると、多数のヒゼンダニが中に入っているため、周囲の人への感染リスクが高く
なります。
2.疥癬の治療と予防方法
疥癬の治療は、ヒゼンダニの駆除とかゆみを抑える薬を使うのが一般的です。ヒゼンダニ駆除でよく知られているのがストロメクトール(イベルメクチン)で、飲むことでヒゼン
ダニを駆除する薬です。日本では疥癬治療専門の医師以外は入手困難と言われていて、個
人輸入をする人もいますが、それほどひどい状態でなければ、個人的には「赤まむし膏」
のような塗り薬を試してみても良いのかなと思います。かゆみを抑える薬としては、花粉
症などでもよく使われている抗ヒスタミン薬(アレジオンなど)が使われます。
患者はもちろんですが、患者と接触があった人も感染の恐れがありますので、同時ケアが
必要です。ヒゼンダニは寄生して生きていくタイプのダニですので、人体から離れると、
数日で死んでしまいます。ただ、ヒゼンダニの卵は生命力が強く、卵が孵化するまでの2
週間ほどは薬も効きません。そのため、2週間ぐらいで症状がぶり返すことも少なくあり
ませんが、もう一度治療することでほぼ良くなります。角化疥癬(ノルウェー疥癬・痂皮
型疥癬)では、2回以上の治療が必要なケースが多いようです。
ヒゼンダニが死滅しても、しばらくはかゆみが残ることがありますが、抗ヒスタミン薬な
どを使いながら様子を見るようにしましょう。
予防法としては、寝具や衣類などをこまめに取り換え、身体を清潔に保つことが大切です。
そして、もし「強いかゆみ」を感じたら、皮膚に目に見えるような変化が現れていないか
をしっかり確認してみましょう。
疥癬患者の洗濯物については、それほど心配することもありません。ヒゼンダニは成虫で
も卵でも、きちんと洗い落とせば感染の心配はあまりありません。それでも気になる人は、
熱湯で洗濯したり、高温乾燥器で乾かせば、ほぼ感染リスクはなくなります。