1.ヒートショックが起きるとき
ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動することで、心臓発作や
脳卒中などの健康被害を引き起こすことを言います。何となく知っていたという人も多い
と思いますが、ではその急激な温度変化とはどれぐらいの温度差かというと、一般的には
温度差が10℃以上ある場合は危険とされています。そして、そのような環境にもっとも
なりやすいのが入浴時ということなのです。

冬の寒い日に、寒い脱衣所で服を脱いだときに、体にブルッと震えを感じたことがあると
思いますが、実は、そのときが体内では交感神経が活性化されて血圧が上昇しているとき
なのです。そして、目の前に温かいお湯があると、誰でも早く温まりたいとそのなかに入
りたくなります。すると、さらに交感神経が活性化されて、一層血圧が上昇することにな
ります。ところが、その後、体が温まると血管が広がり血圧が低下します。
このような血圧の変化によって、心筋梗塞や不整脈、脳卒中(脳梗塞・脳出血)などを引
き起こすことになるのです。もちろん、これらの症状はヒートショックが重症化した場合
のことで、軽症の場合は、動悸や立ちくらみなどの症状として現れます。もうすでに経験
した人も少なくないと思いますが、それはヒートショック(重症化)の一歩手前にいたと
いうことですので、思い当たるところがある人は、これからは冬の入浴時には十分に注意
するようにして下さい。
特に高齢者の場合は、だれでも動脈硬化が進んでいますので、血管の収縮反応が遅くなる
傾向にあります。そして、感覚も鈍くなっているため温度差にも鈍感になっていて、熱い
風呂に長く浸かっていたりすることで、ヒートショックを起こしやすくなります。実際の
ところ、入浴時の死亡事故は、高齢者が自宅で一人で入浴しているときに多く発生してい
るとされています。
2.ヒートショックの予防と対策
ヒートショックを予防する基本は、室内と浴室の温度差を少なくすることです。脱衣所を
温めたり、浴槽のふたを開けて蒸気で浴室を温めるなどの工夫をしてみましょう。特に高
齢者の一番風呂は避けて、浴室が温まったころに入るようにしましょう。
また、ヒートショックを防ぐためには、39℃~41℃の湯温で、10分間程度の入浴が
推奨されています。入浴時には、まずは掛け湯をしてから浴槽に入るようにしましょう。
そして、出浴時も手すりや浴槽の壁につかまって、ゆっくりと行動するようにします。
心疾患などを指摘されている人は、半身浴などで水圧による心臓への負担を軽減すること
も考えてみましょう。高齢者の場合は、睡眠薬服用、飲酒、食後すぐの入浴は避けましょ
う。そして、なによりも大切なのは、その日の体調です。入浴は体調と相談して決めると
いう気持ちが大切です。
万が一、ヒートショックが起きてしまったら、浴槽内で意識がなくなっているような場合
は、すぐに浴槽から救出します。難しい場合は、浴槽の栓を抜いてお湯を抜くようにして
下さい。次は119で電話をして救急車を要請しましょう。

呼びかけに反応しないようなときは、胸の動きや呼吸、頸動脈に触れて脈拍を確認しまし
ょう。呼吸や脈拍がない場合は胸骨圧迫を開始しながら救急隊の到着を待ちます。
緊急事態にそなえて、人工呼吸の講習会などには積極的に参加して、一通りの訓練を受け
ておくことも必要ですが、わからないからと何もしないのも問題なら、間違ったことをし
てはいけないという不安で何もしようとしないのも問題です。
両側の乳頭を結んだ高さで、胸の真ん中の胸骨を5cmほどへこむように、体重をかけて、
1分間に100~120回の速さで押さえます。人工呼吸もできる場合は、胸骨圧迫30
回後に人工呼吸2回のサイクルで行いながら、救急隊の到着を待ちます。
これを機に、入浴環境を見直したり、人工呼吸法の習得に積極的に取り組むという気持ち
になっていただければと思います。