1.未病という状態
私たちの一般的な健康状態については、「健康」か「病気」かのどちらかで判断されてい
ます。しかし、実際の生活上では、自覚症状がないが検査をすると異常があるとか、自覚
症状があっても検査をすると異常がない、といったことが起こりえます。このような状態
にあるときを「未病」と言います。そして、自覚症状があり、検査をしてみると異常があ
るという状態が「病気」ということになるのです。

健康か病気かで生活している現代人には、未病という言葉は新しく感じられるかも知れま
せんが、実は東洋医学の世界では2000年以上も前から存在している言葉なのです。で
は、なぜ近年になって、日本でも「未病」という言葉が注目されるようになったのかとい
えば、その大きな理由の1つが「少子高齢化時代」の到来と言われています。
つまり、少子高齢化がすすむことで、医療費が増大すると、現在の医療体制を維持するこ
とが難しくなるという厚生労働省の考え方を反映した方針の1つと見ることができます。
病気になる前から予防して、高齢者になっても健康を維持(健康寿命の増進)することに
より、医療費の削減をめざしたいということが目標になっているのです。
よく似た言葉に「予防医学」というのがありますが、予防医学とは「特定の疾患になるこ
とを予防する」という内容で、病気にかからないようにする、病気を重症化させないよう
にする、病後の回復・再発防止をする、といった感じでの特定の疾患にフォーカスしてい
るところが違いです。未病の基本的な考えは「心身全般の健康を高める」という点にあり
ます。
2.未病から健康へ
未病として自覚できる症状としては、食欲不振・めまい・肩こり・冷え・倦怠感・イライ
ラ感などいろいろありますが、これらの症状を深刻に考える人はあまり多くありません。
しかし、放置することで将来的に何らかの異常が現れる可能性があるのです。
また、自覚しにくい症状としては、高血圧・動脈硬化・血糖値・脂質異常など、西洋医学
でも未病と呼ばれる症状で、比較的多くの人が何らかの対策をしていると思いますが、や
はり、放置することで脳卒中や心筋梗塞など深刻な病気へと発展するリスクが高くなりま
す。

未病の対策としては、自覚症状がある場合はもちろんですが、ない場合でも取り組む意識
をもつことが大切です。とは言っても、特別なことをする訳ではなく、ウォーキングや筋
トレなど、運動の習慣をつけることです。
薬膳などを取り入れてみることも効果的です。
最後は、規則正しい生活習慣を覚えることです。決まった時間に十分な睡眠をとる、朝食
をしっかり摂る、タバコや過剰な飲酒を控える、ストレスを溜めない、といったことを中
心に、規則正しい生活スタイルが定まってくることで、自律神経も整うことになり、心身
の調子も良くなってくることになります。
いかがですか、当たり前のことばかりと思われるかも知れませんが、未病対策とは「当た
り前のこと」を普通に実践することが最善の方法なのです。江戸時代の貝原益軒が300
年以上も前に、養生訓のなかで「聖人は病気になる前から養生に励め」と説いています。
まさに未病対策の元祖かも知れません。日本未病学会では12月17日を「未病の日」と
定めていますが、その日は貝原益軒の誕生日なのだそうです。