黄斑変性症の原因と症状
白内障や緑内障などに比べて「黄斑変性症」という目の病気はあまり知られていませんが、
アメリカでは視力を無くす人の原因の中で最も多い病気と言われています。
これは、網膜の中心部にある「黄斑」に起こる障害で、物が見えにくい、ゆがむ、中心部
が暗く見えるといった症状があります。
その原因は、加齢、生活習慣、糖尿病などさまざまですが、加齢（目の老化）による機能
低下もその主原因の１つであるということは、高齢になれば誰にでも起こり得る病気とい
うことでもあります。日本人の場合は、症状が見られるようになるのが５０歳ごろからと
言われていますが、その後、高齢になるほど増える傾向にあります。男女比では男性の発
症率が女性の２倍とも言われていますので、男性に多い病気ということになります。
私たちが普通に物が見えるということは、目に入った光を網膜で受け、刺激として視神経
により脳に伝わることで認識することになります。黄斑というのはその網膜の中心部にあ
るのですから、そこに障害が起こるとどうなるかを想像するのはそれほど難しいことでは
ありませんね。
では、何が原因でそのようになるかと言うと、加齢により黄斑の組織が萎縮するいわゆる
老化現象で「萎縮型」と言われるものと、他の原因で網膜にある毛細血管が詰まることに
より、不足する酸素や栄養を運ぶために網膜細胞が新しく血管を作ります。これを「新生
血管」と言いますが、もともとある血管よりもろく破れやすいため、新生血管が破れると
血液が網膜の中に流れ出すことで起こります。こちらは「滲出（しんしゅつ）型」と言い
視界が欠ける、歪んで見えるなどの症状が急速に起こります。
いずれの場合も放置して良い訳ではありませんが、加齢性と違って滲出性の場合は急激に
視力が低下するので手遅れにならないようにすぐに対処しなければなりません。
そこまで急を要する訳でもありませんが、加齢による萎縮型も甘く考えないで相応の対処
をしなければ、やはり将来的には失明に至るリスクが大きくなります。
黄斑変性症を予防するには
滲出型の場合は、まずは眼科を受診することですが、萎縮型の場合は特に治療というもの
はありません。眼科に行っても萎縮型の治療というより、滲出型に移行していないかとい
うことを定期的に観察するのが主な目的になります。
つまり、よく言われるルテインやゼアキサンチンを補給して「目の健康」云々というのは
主にこの加齢性の黄斑変性症（萎縮型）の予防ということになります。
それは、直接紫外線の影響を受ける網膜（黄斑部）を守るための対策と加齢による機能低
下を抑える対策で、その方法として抗酸化作用のある栄養素のルテインやゼアキサンチン
があり、ストレス、過剰飲酒、喫煙、睡眠不足など、体を老化させるようなことをできる
だけ慎むことが主な予防法ということになります。
そのような訳で、高齢化社会や食の欧米化にともない、日本でも加齢性黄斑変性症が増え
てきたことで、近年、眼病予防の１つとして「ルテイン」や「ゼアキサンチン」の広告も
多く見かけるようになってきました。
ところが、ルテインもゼアキサンチンも黄斑部に存在する物質で、どちらも抗酸化力の高
さで知られる成分です。果たしてどちらを摂取するのが良いのかという素朴な疑問を持っ
ている人も多いようですので少し説明しておきましょう。
ルテインもゼアキサンチンもどちらもカロテノイド（天然色素）で、眼の水晶体や黄斑部
に多く存在する物質です。そして、高い抗酸化作用で黄斑部が活性酸素から受けるダメー
ジを軽減する働き、白内障などの予防効果もほとんど変わりません。
強いて言えば、ルテインが黄斑部の周辺部に存在しているのに対して、ゼアキサンチンは
黄斑部の中心部に多く存在しているということです。つまり、黄斑変性症に対してはゼア
キサンチンの方が予防・改善効果が高いということになります。
もともとルテインとゼアキサンチンは構造異性体という関係で、分子式で書けば同じで、
構造が違うだけの成分なのです。ルテインが体内で代謝されることで作り替えられたのが
ゼアキサンチンですので、理論上はルテインだけを摂取すれば良いことになります。
しかし、両者をバランスよく摂取することで、大きな相乗効果が期待できるとも言われて
いて、ルテイン１０mg、ゼアキサンチン２mgの割合で摂取すると、黄斑変性症の発症リ
スクが約６割、進行リスクも約３割減少するとも言われています。
どちらも加齢により減少しますが体内で作ることができないため、食事やサプリメント等
で摂取する必要があります。若い人が美容と眼病予防に摂取するなら食事を意識する程度
でも良いと思いますが、５０歳以上で実際に目の不調を覚えている人はサプリメントなど
で積極的に摂取する必要があります。
サプリメントはルテインとゼアキサンチンのバランスもしっかり考えられているものが増
えてきていますが、やはり眼の健康ではこちらが最強かも知れません。
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